2010年1月14日木曜日

ONE SHOT ONE KILL

人は人を殺せるようには、できていない。では、どうすれば、普通の若者が戦場で人を殺せるようになるのか。サウスカロライナ州パリスアイランド。米海兵隊ブートキャンプの12週間。


藤本幸久監督作品
2010年/カラー/108分
international Version 2011年/カラー/68分/日本語・英語字幕版

プロデューサー  影山あさ子
撮影 栗原良介
インタビュアー 影山あさ子
コーディネーター 福原顕志・加藤鈴子
編集 藤本幸久・栗原良介
企画・製作・著作 森の映画社字幕 影山あさ子
配給・影山事務所
上映スケジュール

入隊の動機 
毎週、ここに500人~700人の若者たちがやってくる。
海兵隊を志す個々人の動機は様々だ。しかし、共通するのは「自分自身の人生を切り開きたい」という思いだ。

★自分を変えて世界を変えたい★自分のキャリアと世界の平和のため
★自分を充実させたい★自分を鍛えたい★世界が見てみたい
★英語が勉強したい

不眠の48時間 

到着は、決よって深夜。到着するや否や、教官の怒号が浴びせられる。到着後48時間、眠る事が許されない。ます家族に電話、話してよいことは、到着の連絡と荷物を送るなということだけ。ありがとう、さようならと電話を切れば、その後、卒業まで、家族の声を聞くことはできない。常に大声で叫べと怒鳴られ、髪を剃られ、制服に着替え、翌朝にはライフルが支給される。「疲労と衝撃が、民間人から兵士への変容を容易にする」と教君たちは言う。


マーシャル・アート(格闘技) 

初めての格闘技の訓練。「どんな深手も恐れるな。相手を生きて帰すな、無傷で帰すな。これが正しい戦闘の心構えだ。分かったな!」一Yes,Sir!


銃剣の訓練 

タイヤの人形相手に刺す、殴りつける、切りつける訓練。銃の先は、本物のダガーナイフ。


ライフル射撃 

「すべての海兵隊員は、ライフルマンたれ」-ライフルは海兵隊員の誇りだ。反射的に体が動くようになるよう、何度も、何度柚同じ動作を繰り返す。兵舎の中で=日訓練が続く。ベッドに入っても訓練は終わらない。「ライフル部隊の任務は、白兵戦で、銃撃と機動力をもって敵を殲滅、撃破すること」と大声で暗誦する。卒業までには、500ヤード(457メートル)先の的に当たるようになる。


クルッシブル(卒業演習) 

卒業前の総合訓練「クルッシブル」は、3日間の野外演習。睡眠時間も限られる中、実践を想定した行軍、射撃、武術など休みなく課題が与えられる。顔に迷彩を施し、姿はもう、兵士。クルッシブルを終
えて「Recruit(新兵)」が、「Marine(海兵隊員)」と呼ばれるようになる。



卒業式 

毎週金曜日が卒業式。入隊する男性新兵の90%、女性新兵の85%が卒業する。卒業後、彼らは、歩兵学校などでさらに数ケ月の訓練を受ける。卒業生の8割は、アフガニスタンやイラクなどの前線に送られる。早ければ半年ほどで、戦場に立つことになる。ここだけで1年間に2万人が、新たに海兵隊員となる。


<解説> 

人を殺したら元の自分には戻れない。

ふるさとに帰れ、一日も早く。

影山あさ子(プロデューサー)

沖縄から、海兵隊が、イラクやアフガニスタンへ送られる。ファルージャ攻撃にも、遠征軍・2200人が、沖縄から出撃した。イラク人7000人が犠牲になり、50人の海兵隊員が戦死した。
高校を卒業したばかりだろうか。沖縄で見かける海兵隊員たちは、とても若い。凄惨な戦場とは、あまりに不釣合いな幼顔をしている。

彼らはどこから来た、誰なのだろう。なぜ、ここにいるのだろう。
パリスアイランド(サウスカロライナ州)のブートキャンプ(新兵訓練所)には、毎週、500人の若者たちがやってくる。彼らは、特別な若者ではない。「大学に進学したい」「良い仕事に就きたい」「社会に貢献したい」と軍隊に志願するごく普通の、そして大多数は貧しいアメリカの若者たちだ。

深夜にバスで到着するや否や、教官たちに怒鳴り散らされながら12週間の訓練に突入してゆく。「返事は!」「Yes,Sir!」「声が小さい!」「Yes,Sir!」「叫べ!」「Yes,Sir!!!」深夜の基地に若者たちの悲鳴と絶叫が響く。最初に教えられることは、「口を閉じよ、疑問を発するな」ということ。髪を剃られ、制服に着替え、「私」という言葉を禁じられ、個性の一切と思考を放棄させられる。そして、卒業まで、何万回も同じ事を繰り返す反復訓練。

一言で言えば、その教育は、①洗脳と、②肉体の記憶づくりである。命令には、疑問を持たず直ちに従う人格形成と、考えなくても命令どおりに動く肉体作りだ。素手で殴り殺し、銃剣で刺し殺し、ライフルで撃ち殺す。沖縄に送られてくるのは、無意識でも人を殺せる技術を身につけた若者たちなのだ。

沖縄の海兵隊員たちの顔が、それでも、なぜ幼く、屈託なく見えるのか。それは、彼らが、まだ人を殺していないからだ。戦場は、沖縄の先にある。
人を殺したら、元の自分には戻れない。
Marines Go Home.(海兵隊はアメリカへ帰れ)、一日も早く。





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